弩とは、カラクリ仕掛けの弓の事である。 弦を張った状態で固定する事が可能で、引金によって発射する。 弩は、木を銃砲のような形に削り出した本体に、 弓を水平に取り付けてある。 本体は臂や身、弩臂と呼ばれ、木で作られた。 弓は翼や弩弓と呼ばれ、木が使われ、場合によっては竹で補強された。 弦は苧麻という麻の一種が使われ、場合によっては 鵞鳥の羽が巻かれた。弦の仕上げには蝋を塗ってある。 引金は、機や弩機と呼ばれるカラクリの箱に収められている。材質は古くは青銅、後の時代には鉄が使われた。
弩の最大の利点は、弦を張った状態の維持が容易いという点である。 一般的な弓の場合、弦を引く力も維持しなければならず、結構体力を消耗する。 弩は敵を狙う事にのみに意識を集中出来るのである。 弩の欠点は速射性に劣り、しかも弩弓を引いている間は無防備であるから、 補助兵の存在が不可欠であった事だ。 三石弩と呼ばれる張力90kgのものは片手で引き絞る為、強力な弓と変わらない。 しかし六石弩という180kgのものは、背を地面に付け両手両足を使って引いた。 これだけの張力でどれだけの威力が得られるかというと、最大射程では810mだ。 しかし古代人の視力が現代人より優れていたとはいえ、800m先の人間まで識別する事は難しいようで、有効射程は150mであった。
私はエンジニアの端くれだが、弩の発射機構は極めて合理的なカラクリであると思う。
まだエンジニアでなかった頃、図書館でただ感嘆の息を漏らしただけであった。
各部品同士が引っ掛かって固定される事により、弦を引き絞った状態でも、固定しておけるのだ。
引金によってその引っ掛かりが外れ、弦は反動で矢を飛ばす。
弩の起源は不明であるが、少なくとも春秋時代には存在していたようだ。 戦国時代初期には大量に装備されている。 漢代には対騎兵用の武器としてますます注目された。 騎兵が装備出来るのは弓までであり、弩を装備した兵士ならその射程外から攻撃出来るからだ。 この事は、弩に耐え得る装甲を持った重装騎兵、更にその重装鎧を打ち抜く威力を持った弩、と発展していく。 やがて火器の時代に入ると、弩は主要武器ではなくなったものの、武器として一定の地位を保ち続けた。
項目 | 内容 |
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名称 | 弩 |
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分類 | 射出/弩・石弓 |
全長 | 50〜80cm |
重量 | 8〜10kg |
射程距離 | 150〜280m |
時代 | 紀元前5〜紀元後15世紀 |
地域 | 中国 |
文化圏 | 中国 |
更新日:2009/06/07